鮒ずしの物語 神事と鮒ずし

すし切りまつり

湖の畔では裃(かみしも)姿で古式に従い鮒ずしを切り分ける神事がある。毎年5月5日、下新川神社(滋賀県守山市幸津川町)で行われる「すし切りまつり」である。知名度も高く、多くの人で賑わう奇祭だ。下新川神社は第10代崇神天皇の皇子、豊城入彦命(とよきいりひこのみこと)を祀る。「西近江で湖賊が出没したため、皇子が征伐に訪れ、この地で休まれたとき村人が鮒ずしとドブロクを献上し、皇子の労をなぐさめた」という故事に由来する。
 崇神天皇は朝廷に従わない勢力を討つため吉備津彦命(きびつひこのみこと)を岡山に向かわせた人物だ。この話は「桃太郎の鬼退治」として語り継がれてきた。天皇は豊城入彦命には東国の統治を任せている。西近江の湖賊征伐は桃太郎と同時代のできごとである。豊城入彦命はこの後、東国へと向かったのだろうか。鮒ずしは「やって来て、去って行く(帰る)」神への供物として捧げられる「ハレ」のご馳走だったのだ。

御家鎮(おけち)

弓射神事は邪気を祓い、福を射止め「平安と豊作」を祈る年頭の行事として各地で行われる。射手は神職、当屋(当家)などが務めることが多い。的は「鬼」の文字や大蛇の目を描いたもの、同心円など地方によってさまざまだ。首尾よく射抜くと、災厄が祓われ豊作に恵まれるという。
 近畿地方を中心に、弓射神事をケチン、ケイチン、ケッチンと称し、「花鎮」「結鎮」の字をあてる地域もある。ケイチンの名の由来は律令時代の「花しずめ」の行事で、春の花が散るのを防ぐ目的でおこなわれた。これは、花が散ることで疫神が分散し、病気を流行させるとされたためである。(波部綾乃 「弓神事の民俗的機能」『古事:天理大学考古学・民俗学研究室紀要17』)
 弓射神事は「祓う」だけでなく「鎮める」ことができるのが面白い。
 滋賀県東近江市鯰江(なまずえ)町で毎年正月5日、弓射神事「御家鎮」が行われる。「おけち」と読む。
 鯰江町は、戦国時代、織田信長軍に最後まで抵抗し続けた鯰江城の城域にある。天正元年(1573)の落城後、命を落とした将兵と城主鯰江備前守真景の霊を慰めるため、祭礼が執り行われるようになったのが「御家鎮」のはじまりである。主催者は正副区長と御家鎮当家。当家は2家で、当人・相当と呼ばれ、1年間精進潔斎し町内の3つの宮世話と神事を担う。
 鯰江城落城後450年続く神事で、現在までの当家の名前を記した巻物を収めた「御家鎮箱」が御神体である。町内の広場に祭壇を設け、神饌には雄と雌の鮒ずしを1尾づつ祭壇に吊り下げる。弓射の後それぞれ12枚にスライスし(閏年は13枚)、その身を雄と雌交互に並べなおして、2尾の鮒にする。子持ちの鮒ずしばかり珍重されるが、雄雌同様に漬けられてきたことがわかる。
 ちなみに平安時代、醍醐天皇が琵琶湖の竹生島に参詣するため「鯰餌源四郎貞平」を召して、湖に出没するサイ退治を命じた。サイは馬や牛のような身体で背中には亀の甲羅があり額に角を持っている。サイを見事に退治した貞平は、天皇より「鯰江犀之助」の名を賜わり、鯰餌姓を鯰江と改めた。貞平の武名は遠方まで響いたという。鯰江氏の始祖の物語である。
*「下新川神社」「鯰江町」の神饌となる鮒ずしはそれぞれ地元で調達されたものが用いられます。

滋味豊かな、淡海のスローフード 鮒寿し

 琵琶湖産の天然ニゴロブナのみを用い、良質の近江米に1年以上漬け込む、伝統の製法にて仕上げました。

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江戸時代名物だった 京橋うなぎ

元禄年間(1688〜1704年)に成立した近江の地誌『淡海録』に彦根地域の特産物として、佐和山松茸・松原海老などとともに「京橋うなぎ」の記載があります。京橋は彦根城の中堀(現在の外堀)の4つの城門のひとつ京橋口御門に架かる橋です。そして、京橋を出たところが「本町」、城下の町割の起点となりました。
 「あゆの店きむら夢京橋店」「うなぎや源内」は、京橋から続く夢京橋キャッスルロードにあります。「源内」の店名は、江戸時代に土用の日に鰻を食べることを考えた平賀源内の名をいただきました。
 「うなぎや源内」は、主に九州の鹿児島産や宮崎産、愛知県産など国内の産地から、季節や生育状況に応じて皮が柔らかく肉厚で臭みのない上質な鰻を厳選して仕入れています。届いた鰻は地下100メートルより深いところから汲み上げた鈴鹿山系の伏流水に3〜4日さらし、ミネラルが豊富で身の引き締まった臭みのない鰻に仕上げます。そして、店で使う鰻を職人の手で生きたまま氷水でしめ、関西らしく腹から割いて内臓と背骨を取り、備長炭を用いてコクのあるタレで、じっくりとふっくら風味豊かな味わいに焼き上げております。

「きざみうなぎ」は、件の鰻を1口サイズにきざみ、真空パックでお届けする人気の商品です。ご飯と温めるだけで、源内の味をご家庭で楽しんでいただけます。

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